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 突風を孕み深緑の皮膜が大きく傾いだ。だが強靱な骨格は、その程度の強風に負けることなくがんとしてびくともせず、力強く風に向かい羽ばたく。機甲を背負ったその姿はまるで別の生き物のようにも見える、空を統べる最強の幻獣、──飛竜。

 人間に比べ極めて長い寿命を持つ彼ら、種としての個体数は少数しか存在しないもののその凶暴さは大陸各地に伝承として残されている。竜の逆鱗に触れ滅ぼされた古代都市の話などはあまりにも有名だ。

 とはいえ彼らの住まう場所は主に南大陸の高山地帯であり、人里に姿を現すことはほとんどない。そのため生態の多くは謎に包まれていた。単独で行動することは無く、人の到達することのできぬ遙か高空を翔る姿を数百年に一度確認される程度の遠い存在。

 彼らは、翼を無くし荒れた大地を闊歩する地竜や知性を失い凶悪な性質だけを持つ砂漠竜などと違い、むやみやたらに姿を見せる事はない。そのかわり、彼らの生息圏に立ち入ったものに対しては容赦ない攻撃の牙を振るう。大陸創世の古き時代より人と飛竜とは相容れぬ種族同士として歴史を重ねていた。

 海の色を反射する鏡のごとく深く蒼い空。遠目で見れば保護色にもなりえる翠の肉体、その隅々までみなぎらせた『力』で、雄々しく両翼をはためかせる。長い尾を舵代わりにしながら広い空を泳ぐ姿は、あまりにも非日常的で実に幻想的だ。

 同じく空を行く幻獣は数多くいるものなれど、これほど雄大で力の象徴と畏れられ崇められる存在はない。まさに空の王者の風格を備えた高次の生物である。

 ──だが今、その蒼空を駆ける飛竜の背には一つの人影があった。

 極稀に種族よりつまはじきにされる竜の仔があった。飛べぬもの、生殖機能のないもの、著しく体色が同族のものと異なるもの……、そして卵の頃に人の手によって盗み出された仔竜。

 幼生の竜とはいえ彼らは凶暴で人間などものともしないほどの強さを誇る。さりとて親竜ほどの力は無く、激しく調教すれば人にも従属するのだ。そう、人の手により育てられたものだけが極わずか乗用の竜として使用されていた。

 背の人影はくすんだ鳶色の外套にすっぽりと身を隠し、遮るもののない強い日差しをさけるかのように大ぶりな兜を身に付けていた。竜をかたどったその面当てからは、意志の強そうな蒼い瞳がのぞく。控えめな輝きを放つ砂漠色の髪は邪魔にならないよう後頭部でまとめられ、高空の冷たい風にさらわれて踊っていた。両頬の脇からは結い上げずに残った緩やかな巻き毛が肩に向かって流れている。手綱を握りしめるための手でさえもその外套の中で、首から下を見ることはできない。

 取り付けられた鞍を挟むように腰掛ける脚には、鉄板が何層にも打ち付けられた脛当てが鈍く陽光を照り返している。その両足の隣にはそれぞれ一本づつ、一目で匠の業物であることのわかるような精巧な細工の施された剣鞘がのぞいていた。幅広なものと細身のもの、双方とも相当な長さがあることが伺える。

 頭部に二本角、顎の脇からは鰭のような皮膜が小さく張り出しているその飛竜は、南大陸ではすこしは名の知られた者の騎竜として畏怖の対象と見られていた。

 魔将軍アキラ・イル・トリティエ、その者が駆る飛竜として──。



センチメンタルファンタジー
第三章 舞踏の章
第十二話 「星導」




 北大陸の中央部には、遙か高き霊山ジルヴァニアがそびえる。幾つもの尖峰が辺り一帯を山岳地帯としているが、中央にいただく霊峰はその名に恥じぬ秀麗さで常に人々を魅了していた。

 ジル山岳地帯を形作る山々は主に霊山よりも北と東側にならび、南側とノースグリーヴ王国側はなだらかな斜面が広がっている。その斜面には高度により様々な植生の木々が密集し大森林地帯を形成していた。ノースグリーヴ王国とティレンサイド自治区の両国間をつなぐ幹線である『森の道』もこの鬱蒼と生い茂る樹林のなかにつくられている。

 国と国とをつなぐ幹線でありながら、緩衝地帯として国家に属さないこの道。霊験なる地ゆえに、ノースグリーヴもティレンサイドも自らの統治下に置くことを牽制しあい、その結果が中立地域という結論なのだろう。時の治世者たちの政治的かけ引きか、それとも何時より知れぬ暗黙の了解か、残念ながらそれを伝える記録はない。

 春、この季節。高山地ではあるが比較的天候の安定している大陸中央部は、冬を耐えた動物や植物たちの命の息吹にあふれかえる。冬季寂しかった落葉樹の林はいっせいに緑の新芽を広げ、ここぞとばかりに燦々と降り注ぐ春の陽光を受けた。

 暖かい空気に誘われて昆虫たちが飛び交うようになると、それを狙う小動物が起きだし、さらにその小動物を捕食する獣たちが活発に動き始める。太古より繰り返される生命の連鎖が、ここではあたりまえのように続いていた。

 だが、そんな命溢れる森に背をあわせるよう隣する地域に、生命の鼓動のない荒れた大地がある。乾燥した空気と谷底に吹きすさぶ砂嵐に荒々しい岩肌をさらし、およそ人が住むことなどできないような厳しい自然の地が。

 はるか昔、北大陸一の水源地であったと伝えられるその地に、現在当時の面影はない。縦横に走る谷がその豊富な水の恩恵を偲ばせるが、神々の作り出した爪痕にも見えるそこは、野盗や国を追われた無法の者たちでさえも決して近寄らない、いわば人跡未踏の大渓谷であった。一部の信仰を持つ民たちには『禁断の聖地』とまで呼ばれている。

 この地が緑に溢れる平原だったころ、そこは地上の楽園であったという。高低差のある台地が群集し、縦横に河川が走っていたため人間には住みづらく、鳥たちや水棲の小動物たちが悠々と暮らす様はまさに別天地。海抜が高く空気は希薄で、大型肉食獣は体機能と運動能力に支障が出るため暮らすことができず、そこに住まう生き物たちにとって外敵というものが存在しなかったのだ。

 しかし、永遠の楽園というものは決して存在し得ないものであった。

 神々のいたずらか、それとも魔の住人達の仕業か――、あまりにもあっけなく水源が枯渇すると、楽園が死の荒野に変わるまでさほど時間を要さなかった。容赦なく照りつける太陽と、乾燥した砂嵐に吹きさらされ、今は赤茶けた不毛の大地が広がるばかり。時折降る豪雨が水のない谷を削り、さらに環境を厳しく変化させる。

――生命を拒み、人をよせつけぬその地。大陸の人々はそこを『沈黙の谷』と呼ぶ。

 小さな昆虫や、かろうじて気候に適応した小動物たちがわずかに住むほかには、木々や下草もほとんど存在しない荒れ果てた厳しい環境の地。そこにはなにもないということは、多くの人々に知られている事だった。

 南大陸にも似たような、生命のない荒れ野の広がる地域があるのだが、そちらは古代文明の遺跡が点在し、過去の生活の息吹を垣間見せる。そのため、古代遺産発見の夢を見る者たちが訪れてやまない。

 だが、沈黙の谷は違う。ここには本当になにも存在しなかった。いや……、存在しないということにされていたのだ――。



 砂を含んだか風がびょうびょうと音をたてながら、アキラの外套をはためかせていた。既に竜の背からは降りており、谷底の乾いた大地を踏みしめている。強風とまではいかないが、そこは常に風が吹きこんでいた。いずこから流されてきたのか、枯れた小枝がからからと音を立てて足元を転がり行く様子が、物悲しさをつのらせる。湿度の限りなく低いぱさぱさとした空気は、どこか彼女の故郷に似た匂いをしていた。

 昼も只中の、太陽が一番高い位置にある時間。空は青々と晴れ渡り、さえぎるものなく照りつける陽光が聖王樹の月とは思えないほど暑く、じりじりと露出した肌を焼く。谷の壁となっている岩石には光を反射する金属物質が含まれており、ほんのわずかの陽光も強烈なものとなって突き刺すように谷底まで降り注ぐのだ。

「――なるほど、面白い地だ」

 きらきらと燐光を放つ足元の岩を見て、アキラはわずかに口元を緩める。位置としては北大陸の中央部、本来ここまで荒れ果てるほどの緯度ではない。現に、沈黙の谷より南には豊かな水に育まれたノブルホロアの平原が広がっていたり、緑に溢れる杜の城砦都市オワリノミヤコが存在しているのだ。それほど変わった土地なのである。

 くるるる……と、竜が細い声で鳴いた。強靭な空の王者たる存在は、普段こんな鳴き声などあげない。

「そうか、おまえも懐かしいのだな」

 かるく首筋をなでると、飛竜は瞳を瞬かせた。風防にもなる半透明の眼膜が下からせりあがるのと同時に、上の瞼もおおいかぶさってぱちくりさせる。遠目でみると武骨で厳つい顔つきであるが、こうして近くで見ると存外にかわいらしい。

 ぽんぽんと顔の横あたりをやさしく叩いて、アキラはその手を離した。そのまま大仰なつくりの兜に手をかけ脱ぎ去る。かるく頭を左右にふり、さっと手櫛で髪を撫でつけた。黄金にも似た砂漠色の髪。海よりも深い藍色の瞳。派手過ぎるほどではないが、華のある女性であることは一目でわかる。

 竜の頭部を模したそれを左手に抱え、首もとの留め具と内部のかけ具を片手一本でさっと外すと、厚手の外套は左半身側から割れて中の服が露出した。

――深紅。燃えさかる灼熱の緋色をした内着と、暗赤色の上着。

 どこの国の様式とも違う、民族衣装的な縫製の着衣である。金糸なのか、基本色の赤によく映える黄金のラインがどこか豪奢であり、すらりとした長身できりっとした顔立ちの彼女に似合っていた。

 谷底は見渡す限りの荒れ野である。きらきらと陽光を反射する様が幻想的ではあるが、少なくとも人が生活できる地には見えない。だが彼女自身は人の強さ、しぶとさというものを知っていた。だからこの地を訪れていることに迷いは露ほどもない。

「――歴史から排除された禁断の地、自らの存在を否定し隠れ住む者達……」

 色彩の少ないこの谷で、その赤は痛いほどに映えた。そしてその鮮やかな色彩に負けぬ美しい容貌。まるでそこだけが別な世界へとつながっているかのようでさえある。

「沈黙の谷か……、うまい名前をつけたものだ」

 そういってアキラは口元にわずかな微笑を浮かべた――。



 闇の存在を操り、次々と南大陸の各都市を手中にしている魔軍。銀色仮面、素性不明の魔軍参謀長を筆頭に、魔軍には3人の将軍が居た。

 参謀長の片腕として仕えるは腐敗の森の街ディーランドの魔女と恐れられ、無限の魔力を持つと噂される暗黒魔導師ユウ・イルバガット。燃えるような真紅の髪と瞳、相反する黒の法衣が得体の知れなさを醸し出す。無口無表情であるが、強力な数々の魔法を操り、禁呪にも精通している。

 チエ・フォルツァは城砦都市レディンスヒルの戦士団団長を務めていた。街が魔軍に包囲され、最後まで戦い抜くことを心に決めたとき、彼女は王命にて魔軍への協力を求められた。さまざまな紆余曲折の後に、チエは魔将軍の汚名を断腸の思いで受けることになる。生来の武人の血が流れており、常に参謀長とは意見の食い違いを見せているが、国という枷が彼女を縛り付けている限り、彼女に反旗を翻す余地はない。

 そして彼女、アキラ・イル・トリティエ。どこからともなく流れ着いた美貌の剣士、魔軍のカリスマ的存在。自らの素性は語らないが、孤高の鷹のような意思強く誇り高き瞳が、多くの人間を惹きつけた。華麗な剣戟は見るものを魅了し、戦に出れば常勝無敗の負け知らずである。魔軍に荷担することに反目を覚える占領都市の戦士達でも、彼女の力になるためならばと思うことが多いという。事実、チエもその一人である。

 アキラは今、沈黙の谷をゆっくりとした足取りで進んでいた。冷たい風の吹く上空に比べここは少々暑く、外套は竜のところに置いて来てある。今は着衣にマントといういでだちだ。腰に刺した二振りの剣が殺伐とした印象を抱かせるが、精緻な細工の施された鞘と鍔は儀礼用の礼剣よりも美しい。

 一方は黒。闇夜に溶けて光を反射しない漆黒の闇色の刃は、同色の鞘に収められている。細身でかなりの長さを持ち彼女の足首まで到達していた。

 一方は紅。灼熱の緋色は彼女の着衣と同じく、燃え立つ焔を思い起こさせる。刀身は幅広でかなりの重さを有していると思われるのだが平然と腰のベルトに留められていた。

 細かい砂の大地から、所々に岩盤が顔を覗かせている。水分を吸収することのできない地質は、雨が降ってもそのまま昔の川下にむかって流れてしまい、水の確保もままならない。井戸を掘るにもこの谷底の岩盤は硬質過ぎて、相当な労力を要するであろうことが目に見えている。

 この生命を寄せ付けない地に、彼女がある噂話を聞いたのはいつのころだっただろうか? それはもう随分と昔のことのように思えていた。

 谷底を流れる風はぬるく心地良いとは言いがたい。気温も徐々に上昇しつつある時間帯であり、ともすると汗が噴出してもおかしくないような状況であるのだが、アキラは汗ひとつかいていなかった。もともと暑さには強いほうなのかもしれない。

――上空から見た様子ではこのあたりだと思ったが……。

 彼女がそんなことを考えていたとき、不意に人の気配を感じた。が、すぐにそれは消える。よほど気を張り詰めているか感覚が鋭いかでなければ、気にもとまらなかったであろう。彼女の場合それは後者である。

 あまり大げさにしても仕方がない。剣を手にすることもなく廻りを見回しながら、

「――谷の者か? 姿を隠さずとも争う意思はない」

 よく通る声でアキラは言った。どこにも人の姿は見えないが、確かに見られている。一方的な視線ではあるが、じろじろとした無遠慮さはなく、むしろ好奇心に満ちたまなざしのように感じられた。不快感はあまりない。

 視線は一つ。決して敵意ではないそれは、あわてるに足らないと確信をもった。

「――すまぬが、案内を頼みたい。出てきてはくれまいか?」

 駆け抜ける風音に負けずその声は良く響いた。口調はどこか男っぽく、その輝くほどの美貌には少々そぐわない。

 いや、だからこそとでも言おうか。魔将軍と呼ばれる彼女にはそれが良く似合っている。誰にも屈することのない孤高の剣士と呼ばれた彼女には――

 だが相手からの返事はない。肩を落とすこともため息をつくこともせず、彼女は再び歩き出した。その視線がはじめからなかったのごとくに。

 と、そのときである。彼女の進む方向の数歩ほど先のところに、小さな影ができた。それは、みるみると大きくなっていく。アキラは反射的に上を見上げた。

「こ、子供だと?」

 逆光に目を細めながら確認したその姿は、間違いなく人間。しかも年端もいかぬ子供のサイズだ。中天の大陽を背に切り立った崖の上から飛び降りた人影は、空中で少しももがくことなく、ぐんぐんとスピードを増し、アキラが受け止めに走る刹那の時さえ与えず谷底に着地した。

――それがさも当然のことであるように。

 ばさばさと身にまとった外套が風に弄ばれるなか、とすん、という軽い音だけが妙に耳に残った。およそ常識の通用する高さではない。城壁や三階層造りの一般家屋よりも遙か高さがあったが、その子供は少しの砂煙を上げただけで何事も無かったかのように両足で大地を踏みしめているのだ。

「……」

 これにはさすがの魔将軍も言葉を無くしてただ見つめるのみであった。いや、表面上は少々眉をしかめたくらいでおよそ驚いているようには見えないのであるが。
 感情の起伏に乏しいというわけではないが、彼女はよほどのことがない限り驚きの声など上げない。そして、このあまりにも非日常的な場面でさえ、アキラにとっては『よほど』のこととなり得なかった。それだけのことである。

 背丈は彼女の胸のあたり、細い手足が丈の短い外套からひょろりとのぞく。目深にかぶったフードの奥から、彼女を値踏みするような鋭い視線が投げかけられていた。

――刹那、ぞくりとした感覚が背筋を駆け抜ける。

 子供とは思えぬほどの、冷たく厳しい眼光。心の奥底までも射貫くがごとき鋭さを持った瞳。殺気とも取れるその視線に、剣を引き抜くことはおろか全く動くことのできない自分に衝撃を受ける。ほんのわずかの間であったのにも関わらず、身も凍るような寒気を感じずにはいられなかった。

 だがそれも一瞬のこと。軽く頭をふりながら両手でそのフードを取り去ると、先ほどの鋭い視線が嘘のような人なつっこい笑みを浮かべた少年の顔があらわれる。

 よく日に焼けた赤銅色の肌に、短く刈り込んだ白金色の髪。限りなく透明に近いブルーの双眸は、好奇心に満ちたまなざしで二刀流の剣士を見上げていた。にっと笑みを浮かべると真っ白で並びのよい歯が、肌の色と対照的でありよく映える。年の頃なら12〜3歳といったところだろうか。

 あまりにも唐突すぎるその変化にアキラはとまどいを覚えた。だが、そこで怯むような彼女ではない。内心の動揺を露ほどもみせず、少年に向かって口を開く。

「案内を頼みたい。谷の長老のところまで」

 そんなアキラの心中を知ってか知らずか、少年はしばしの間じっと魔剣士の顔を眺めていた。口元にうかべた緩やかな笑みと一点の曇りもない純粋で真っ直ぐな眼差し。春の日溜まりを思い起こさせる暖かな表情は、彼女の心の揺らぎに拍車をかける。

――それが、いったい何だというのだ?

 だが、少年が動き出すまでアキラは待った。
 少々厳しいとも取れる凛然とした表情は、先ほどからぴくりとも変化していない。あわてたりうろたえたり取り乱したりする事は、何よりも彼女自身が耐えられなかった。

 不意に、少年は彼女に背を向けて走り出す。そしてある程度彼女から距離をとったところで立ち止まり振り返ると、片手をあげ谷の奥の方を指さした。

「ついてこい、というわけか」

 ぽそり、と、誰に言うでもなく彼女は口にしていた。そうこうしている間にも、少年は谷底の巨石に飛び乗り彼女が動くのを待っている。断崖から飛び降りただけでも驚愕に値するその少年の脚力は、飛び上がる力も常人離れしているようだった。

 先ほどから一声も発していない少年に違和感を覚えながらも、アキラは歩き出す。谷の子であることには間違いないだろうし、ついていく以外に手だてが無いことも事実であった。

 すべてが仕組まれた寸劇ならば、その上で踊ることも余興としてはいいだろう。

 谷底をなめるように吹き抜ける強風に濃赤色のマントをなびかせながら、二刀流の魔将軍は砂と岩盤の大地を堅く踏みしめた――。



 アキラの歩んでいた方向にほぼ間違いはなかった。少年はある程度の距離を置いたままつかず離れず先をゆく。しばらくすると、どこか人の手のつけられた道に出た。整地されているとはいえ、大国周辺の街道とは見比べるべくもないみすぼらしいものだ。かろうじてそこに人が住んでいて、生活に使うためといった趣はどうしても隠しようがない。

 少年は両手を広げて、広い道を蛇行するように駆けながら進む。アキラはゆっくりとその背を追いながら、なんとはなしにあたりを眺めていた。と、大自然の創り出した谷壁の中で、わずかに違和感を与える人工的な模様を見つけ鼻白む。巧妙に周りに溶け込むよう描かれているそれは、幻惑を与え迷い込んだ人を寄せ付けぬ魔印。

 竜と彼女自身の常人離れした感覚で、この場所の目星をつけたところまではよかった。だが、これでは最終的な所できっと阻まれていたのだろう。おそらくこの少年の案内なくしては、ここまでたどり着いたとしても、そのまま引き返すことになっていたはずだ。最悪の場合、幻想の迷宮より抜け出せず命を落とすことになったやもしれない。

 隠蔽され亡き者にされ歴史から忘れ去られた、沈黙の谷の人々。そこまでして自分たちの存在を消す理由はいったいなんなのか?

 いや、そんなことは既にわかっている。だからここまで来ているのだ。アキラは冷厳ともとれるキッとした表情の口元に、わずかに笑みを浮かべた。彼女自身、隠れて住まなければならない者達の心境はよく分かっているのだから。

 谷は終わりに近づいていた。徐々に壁幅がせばまり、ゆるやかな上り坂になっている。少年は飛び跳ねて砂礫の谷底を進んだ。ここは日陰になっているためか、足下の空気はひんやりとしている。素足に布きれをまいただけで靴をはいていないのだが、そんなことはお構いなしに少年は跳躍していた。その距離も半端ではない。

――この劣悪な環境下で育ったとしても、ただの人間にここまでの力はでない。

 だがアキラはその事を疑問に問いかけることもせず、黙々と歩んだ。そうでなくては、ここまでわざわざ来た意味がないからだ。

 終着点は切り立った壁になっていた。両側の壁どうしが極端にくっつきすぎて閉じられてしまったと表現した方がいいか。それは天変地異による地殻変動か、それもとこの谷の人々の力なのか――。

 その左右の壁の押し合う最下層部に、わずか人が一人通れるくらいの亀裂があった。その前で立ち止まっていた少年はアキラがそばまで来るのをまって、その大地の裂け目に身を滑らせた。

 少年の身長ならば身をかがめることもなく通れる隙間も、女性にしては身長のあるアキラには少々狭い。壁肌もごつごつとしていて、歩きにくいことこの上ない。

 引っかけて破いてしまうことをおそれ、さっとマントをはずし腰に下げられていた二本の剣を包み込むようにして小脇に抱えなおした。大した品ではないが、長年使用しているマントである。愛着もある。

 どこから光が射し込んでいるのかよくわからないが、風の通り道にも近い谷底の洞穴は、暗すぎるということがなかった。足場は悪いが歩けないほどではない。それは緩やかな下り道となっており、分岐のない一本道だった。先をゆく少年の姿はいつしか見えなくなっていたが、迷いようのない道筋であるから特に気にせず歩をすすめていた。

 ほどなくして景色が開けた。やや斜めに傾きかけた太陽が、それでも燦々と午後の熱波となって陽光を降り注がせる。それまでの薄暗い通路から、一気に光度が変わったことにやや目を細め、あいた片手で顔の前にひさしをつくってその明るさに慣れるまでまった。

 と、その眼前にひょこりとさきほどの少年が顔を近づけ、アキラは反射的に剣を引き抜こうとした。だが、抜刀するための剣がいまはマントにくるまれており、腰元に移動した手はあえなく空をつかむだけ。なんとばつの悪い思いを抱いたことかを、知ってか知らずか屈託なく少年は笑みをうかべる。なんの気配もさせず彼女にここまで近寄ったのだから、あながち悪いのは少年だけではないということになる。

 そのままアキラはマントを羽織り、憮然とした表情で剣を腰に差しなおした。どことなく居心地が悪い。少年はにっと笑うと再び背を向けて駆けだした。

 少年の背を追いかけて視線を移動すると、そこに広がる隠れ里の様子が目に飛び込んできた。かなり広い円形に開けた場所で、その斜面にひっそりと寄り添いあうように小屋がまばらに並んでいる。今立っているところはすり鉢状になった小さな集落のはずれであり、坂の上の高い位置であった。緩やかとは言えない急峻な斜面であるが、少年はその身を投げ出すように自分の生まれ育った町へと跳躍していた。

 ふり返ると、今出てきた亀裂のさらに上方まで無機質な岩肌が切り立っている。それも、きらきらと陽光を反射する相変わらずの地質だ。だが目を凝らすとそこかしこに目くらましのための魔印が刻まれている。そうしてまで世俗から離れて隠れ住まなければならない理由が、あの少年を見ているとなんとなくわかる気がした。

 視線を戻すと、当の少年はあっという間に底のほうまで駆けていってしまった。最初の約束の通り、長老のところまで案内してくれるつもりなのだろうか、かなりその姿が小さくなるほど離れたところで立ち止まり、ふり返って少年は手を振った。

 アキラは少しだけ迷った後に、少年と同じように駆けだした。ところどころにある岩を避けて左右に飛ぶように――、そこで生まれ育ったものならば少しの不思議もない行為なのかもしれないが、とても外部の人間が一目見だだけでできることではない。ある意味彼女自身も規格はずれだった。

 最後の跳躍でふわりと少年の側に着地すると、そのまま何事もなかったようにすっと立ち上がる。

「長老のところはもう近いのだろう? 遠慮なく駆けるがいい、私のことは心配いらない」

 ぽんと、少年の頭に手をのせアキラは言った。あれだけの運動をしたのにもかかわらず、息一つ乱していないのはさすが魔将軍とまで呼ばれることはある。驚いたような、そしてどこかうれしそうな表情を浮かべた。アキラがすっとその手を引くと、少年はすこし離れたところにある壁肌を指し示す。そしてそれ以上動こうとしなかった。

 怪訝な表情で指し示す方向を見やると、わずかに口を開く洞窟が確認できた。そこだけえぐり取られたように一段低くなっており、さらに大地との境界面近くにごつごつとした大小の岩々が点在しており非常にわかりにくい。

――あそこに目的の者がいるというのだろうか?

 疑問に思った彼女が少年に視線を戻すと、既にそこには誰もいなかった。

「!?」

 どこへいったのかと左右を見やったが少年らしき姿はない。あるのは砂礫の大地にひっそりと根付く背の低いやせた木々と乾燥した空気だけ。少年はほんの一呼吸の間に風のように消えてしまっていた。狐につままれたような気分になる。

 アキラは一つため息をつき、少年の指さした洞穴に足を向けた。礼の一つくらい言わせてくれてもよかったろうにと、心の中でつぶやきながら――。



「お待ちしておりました」

 唐突に声をかけられ、アキラは歩みを止めた。幾分低くなっている洞窟の入り口の岩を、腰をかがめてくぐったすぐ後のことだ。暗闇のなか、ぼんやりとした明かりがその声をかけてきた者の姿を浮かび上がらせている。ゆっくりとした、それでいて迷いのひとかけらもない足取りで近づいてくる人影。

 白いローブを身にまとった人物だった。肩口よりもわずかに長い髪の毛が、歩調にあわせてさらりと揺れる。薄明かりのなかでも目立つ明るい栗色の髪をすべて後方に流した髪型で、白磁のようななめらかで白い肌によく似合っていた。足首までの長い法衣には幾何学模様の縫い取りがあり、その者がなんらかの魔術を扱うのだろうということが容易に予想できる。

「……予言の力か、面白い」

 アキラは小さくつぶやくと、真っ直ぐにその者を見返した。

 身長はアキラよりも頭半分ほど小さい。細く澄んだ声色は、その者が明らかに女性……いや、少女と呼べる年齢であることを明確に告げていた。17〜8歳ほどであろうか、端整な顔立ちであるがその双眸はなぜか堅く閉ざされている。どこか月光の下で咲く花のような、ひっそりとした美しさだった。

「貴方がこの谷の長老か?」

 外見だけで判断するほど愚かではないが、いささかこの少女がこの谷の長だというには幼すぎるように思えた。ここまで案内をしてくれた少年もそうではあるが、この娘も常人離れした能力をもっているにちがいないのだろう。だが、治める者にはそれだけの空気が常について回る。彼女にはそれが全く感じられなかった。

「――この谷に、長老と呼ばれる者はおりません」

 小さく可憐な唇が言葉を紡いだ。言いよどみはなにもない。ただ淡々と真実のみを述べる口調は、取る者によってはぶっきらぼうだと思えたのかもしれない。

「ならば、貴方がこの谷で一番の『能力』をもった者なのか?」

 アキラは質問の仕方を変えた。回りくどいことの好かない彼女の真っ直ぐな問いかけに、対面する少女は口を閉ざした。表情は変えず、そのまま数呼吸の時が流れる。

「こちらへ……」

 すっと客人である剣士に背を向けると、少女は洞窟の奥へと再び引き返していった。アキラはためらうことなく彼女のあとに続いた。


 洞窟は意外なほど広かった。採光と換気のための通風口が至るところにあり、ここが岩山のなかだとは思えないほど快適な空間になっている。さほど深くはなく、数段の階段と少しの通路を経て、居住空間とおもわしき場所に行き着いた。

 簡素なテーブルと椅子、岩肌をくりぬいてつくった寝床と、ほかの部屋につながっていると思わしき扉が二つ。テーブルにはなにかの紋章の描かれた円筒形の帽子がのせられており、椅子には杖が立てかけられていた。

「どうぞ、おかけください」

 自分は奥の扉の前まですすみ、客人であるアキラにひとつしかない席をすすめる。だが、アキラはその少女の気遣いを丁重に辞すると、少女に相対する形でテーブルを挟んだ地点で立ち止まった。

「単刀直入に言おう。私は『力』をもった者を望んでいる」

 なんの前置きもなくアキラが言う。

「運命を切り開くための『力』を持った者を求めている」

 あまりにもストレートなその思いを、なんのてらいも迷いもなく言い切ってしまうことが、彼女の本質的な強さなのだろう。
 答えに窮したのか、しばらく少女は黙ったままだった。

「……この谷は外界との交流を断っています。谷の廻りにも厳重な封印が施されているように、私たちは外部との接触を望んではいません」

 不意に口を開いた少女の言葉は、暗にアキラの要望を拒否するものであった。先ほどからかわらずずっと瞳を閉ざしているせいで、表情のよみとりが非常に難しい。心の動きを察知しようとしても、とめどなくつかみ所がない。

「だが私はここにいる。そして貴方は一番最初に私を待っていたと言った。その言葉には大きな矛盾が含まれているのではないか?」

 少女の言葉を返すようにアキラは言った。確かにそうだ、望まれぬ客人ならば谷に入ることすらできずあきらめて帰っていたはずなのに。

「つまるところ谷の住人であるあの少年に私は認められたのではないかな、だからここにいて貴方と話をしている」
「――長老というのならば、」

 アキラの言葉のに重なるように少女は口を開いた。

「長老と言うのならば、私よりもウル様のほうがずっと正しいでしょう」

 話の腰を折られたはずなのに、アキラは嫌な顔ひとつせず少女の言葉に耳を傾けていた。少女がいったウル様というのは、おそらくあの少年の事なのだろう。丁寧なだけなのか、それとも他に理由があるのか、同じ谷に住まう者まで尊称をつけて呼ぶとはいったいどういうことなのか。

「――どういうことか説明してもらえるか。それだけではわからぬ」
「あの方は、私などよりもずっと永い時代を生きています。その身に時をとどめたまま、遥かなる時間を過ごしてきているのです」

 はじめに受けた少年の視線の鋭さが、そこに起因するものだったとそこでようやく気が付く。常識では考えられないことだが、それが真実であろうことにアキラは気が付いていた。

「この谷の者は、生まれながらにして何かしら生活に必要な機能が欠けています。それ故に一般世間にはとけ込めず、迫害され生きていけないのです。現に私の瞳は、光を見ることがかないません――」

 痩せた荒野、そこに這いつくばるようにして生きる人々は、先天的になんらかの障害を与えられている。これが試練でなくてなんというのか。そしてその試練が迫害される要因になっているというのだから、世界というものはなんと残酷なのだろう。

「手足の機能を果たさない者、言語に障害がある者、二つの性を持つ者、色を持たない者、年を重ねられない者……、皆それぞれに不都合を抱えています」

 訥々と語られる谷の者の言葉。だがそこに卑屈な響きはなく、むしろそれを誇りと思うような晴れ晴れとした輝きがあった。

「だが、そのかわりに別な力がある。他の者にはない、特別な『力』が」
「……」

 割り込まれた言葉に、盲目の少女はゆっくりと頷いて答えた。

「不遇は神に愛されたものの証。あなたがその『力』を欲していると言うことはわかっています。ですが谷の者は谷を出ず、一生をここで過ごすさだめ」

 アキラの表情に険しいものが混ざる。その保身的な少女の言葉に、憎悪にも似た感情が渦を巻き始めていた。

「――この狭い閉じられた世界が自分のすべてだというのか?」

 静かではあるが、凄絶な彼女の決意を体現した言葉である。少女の言葉はわかる、わかるが彼女の理念とは相容れない。

「数々の国、多くの人々、様々な生活様式、それらなにひとつ接することなく、ここで生まれたというだけでここに骨を埋めるまで閉じこもっているなどとは、それは世界を創り出したる神に対する冒涜ではないか? 与えられた恩寵を放棄し、なんの改善も求めないでいて満足だというのは、選ばれた民だという傲慢か?」

 少々きついともとれる口調であったが、少女はぴくりとも表情を動かさずその言葉を聞いていた。

「力を持ちながら、我関せずという態度をとり続けることがこの民の未来に何を与える? このまま何の行動も起こさずただ生きるだけの道に、何が見いだせるというのだ」

 閉じられた世界なりに幸せに暮らしていたあのころ――
 突如攻め込まれ、ことごとく破壊され蹂躙された故郷――
 いつ襲われるやもしれぬ恐怖にいつもおびえていた、暗く惨めな逃亡の日々――

 思い出したくはない、けれど、忘れてしまうことのほうが何よりも痛い。

 不意にアキラの脳裏に浮かぶ過去の記憶。その忌まわしいヴィジョンを振り払うよう左右に頭を振り、言葉を続ける。

「どうした、答えることができないのか」

 冷静な彼女がここまで声を荒げることはきわめて珍しかった。それほどまでに、アキラはこの少女を欲しているというのだろうか。

 そこまで言い放たれたのにも関わらず、少女はすっとアキラのそばによった。正確に言うと、アキラの立つテーブルと椅子のところまで歩んだというだけの話なのだが。

 それまでいくらか距離があったためよくわからなかったが、こうして近くでまじまじと見ると相当に華奢な体つきである。この不毛の大地で、健康に発育すると言うことの難しさが偲ばれた。

「世界は今、混沌のうねりの中にあります。そのなかで人間は、激流に弄ばれる木の葉よりも無力な存在でしかないでしょう」
「そこまで『視えて』いるのならば、何故動くことを躊躇う? 所詮別世界の出来事だからとでも言うのか」
「本当は『力』など使わないほうが良いのです」

 矢継ぎ早に押し問答を繰り返す。だがそれにも終焉が見え始めていた。

「わたしたちの『力』は多くの人を救うかもしれません。けれど、その反面さらに多くの人を不幸にしてしまうかもしれない」
「人の不幸の上に成り立つ幸せなどなんの価値があるか。だからこそ、世界に新たなる基盤を築く必要がある」

 一歩も引くことのない真摯な眼差し。それは、本来見えないはずの少女の視界に、ありありと描き出されていた。

「……今の世界には道を示す者が必要です。闇夜の海原に灯台が必要なように、進むべき道を照らし標となる者が。ここであなたと出会ったことも、星の導きなのでしょう」

 そういうと、少女はテーブルの上に置かれた鍔のない帽子を手に取る。頭にのせるだけの形のものだ。顔の全体を覆い隠すよう、わずかに前方に張り出した部分からは半透明な薄布がつけられていた。

「――ならば、私とともに来てくれる、のだな」

 少女の口にした遠回しな言葉を、彼女流に言い換えて確認を取る。その唇に柔らかな笑みが浮かんでいた。

「ですが、谷の者は誰にも仕えません。それだけはお忘れなきように……」

 こくりと頷いて、少女は杖を手にする。はじめからそうなることがわかっていたのか、その行動に躊躇はなかった。そして入り口近くの壁に掛けられていた外套を羽織る。

「名は?」

 至極簡潔にアキラは少女に問いかけた。視覚は断たれているはずなのに、すべて見えているかのような立ちふるまいに、内心で舌を巻く。

「――ミユキ、と申します。アキラ様……」

 ゆっくりとした動作でふり返りながら、閉ざしたままの瞳を決して開けることなく少女は答えた。

「……そうか、良い名だ」

 名乗ってもいないのに、相手に名を呼ばれるのはかなりの違和感を覚えた。だが、彼女はそれを問いただそうとはせず、盲目の少女の手を取る。

「世界に新たなる秩序と革命を……、それが私の唯一の願いだ」

 真剣な眼差しは、彼女の決意のほどを伺わせていた。表面上はいたって冷淡でそうは見えないのだが、その心中には熱き炎が宿っている。未来を視る力を使うまでもなく、ミユキはそれをはっきりと感じることができた。

「――ミユキ、私の運命を紡げ」

 と、次の瞬間、見えぬ瞳に未来の光景がめまぐるしく映し出される。

「ここからさらに東、ティレンサイドと呼ばれる街にほど近い地で、貴方は貴方の運命に出会います。どう対するか、それは貴方次第……」

 いきなりの予言めいた言葉に臆することも一笑に伏することもなく、アキラは至ってまじめな顔つきでミユキの姿を見つめている。これから向かう先がまさにその地なのだ。

「……いくぞ」

 笑みを消し去り、アキラはマントを翻して歩き出した。見えてないとはまるで思わせぬ足取りで、ミユキもその背中を追う。

 先に待つ運命と言う名の壁、それがアキラだけではなくミユキにとっても大きな奔流であると、その胸に秘めたままに――。


 To be Continude.




    
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